「労働安全衛生法」を徹底攻略!
管理体制・作業主任者・計画の届出を数値で制する
1級土木施工管理技士の第一次検定では、「法規」から例年12問が出題され、そのうち8問を選択解答する形式です。法規は満点を狙う分野ではなく、得意な法令で8問を確実に取りにいく分野です。その「得意」にすべき筆頭が、この労働安全衛生法(安衛法)です。
労働安全衛生法は、法規の中で毎年2問前後が出題される定番分野です。しかも問われる論点は、① 安全衛生管理体制(誰を何人以上で選任するか)、② 作業主任者を選任すべき作業、③ 計画の届出(14日前・30日前)、④ 就業制限・安全衛生教育の4つにほぼ集中しています。第二次検定(実地)の安全管理の記述でも、統括安全衛生責任者や作業主任者の職務はそのまま使えるため、学習の費用対効果は法規の中で最強です。
安衛法が難しく感じるのは、似た名前の管理者がずらりと並ぶからです。「統括安全衛生責任者」と「総括安全衛生管理者」、「元方安全衛生管理者」と「安全衛生責任者」――この区別さえ図で押さえてしまえば、あとは人数(100人・50人・30人・20人・10人)と日数(14日・30日)の暗記だけ。この記事では、体系図・比較表・ひっかけ総まとめ・一問一答10問で、そこまで一気に持っていきます。
1労働安全衛生法の全体像 ―「事業者責任の法律」
労働安全衛生法は、職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進することを目的とした法律です(第1条)。もともとは労働基準法の第5章「安全及び衛生」でしたが、1972年に独立した法律になりました。したがって、労働基準法と一体的に運用されるのが基本です。
- 事業者
- 事業を行う者で、労働者を使用するものをいいます(第2条3号)。労働基準法の「使用者」より狭く、法人であれば法人そのもの、個人事業であれば事業主個人を指します。安衛法の義務は、原則としてこの「事業者」に課されます。
- 労働災害
- 労働者の就業に係る建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等により、または作業行動その他業務に起因して、労働者が負傷し、疾病にかかり、または死亡することをいいます(第2条1号)。
- 元方事業者・特定元方事業者
- 元方事業者とは、一の場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせているもののうち、最も先次の請負契約における注文者(=元請)のことです。そのうち建設業・造船業を営むものを特定元方事業者といいます。
安衛法の最大の特徴は、「重層下請構造」を前提に、元請に統括管理の責任を負わせた点です。建設現場では、元請の労働者と何社もの下請の労働者が同じ場所で混在して作業します。そのままでは「誰も全体を見ていない」状態になり、混在作業に起因する災害(上から物が落ちる、クレーンの旋回範囲に人が入る等)が防げません。そこで特定元方事業者に統括管理を義務づけたのです。この趣旨を理解しておくと、次章以降の丸暗記がぐっと楽になります。
2事業場ごとの安全衛生管理体制 ―「100人・50人・10人」
まずは1つの事業場(=会社の支店や1つの現場)の中で必要な体制です。建設業の場合の選任基準は次のとおりです。
| 選任すべき者 | 選任が必要な規模 (常時使用する労働者数) | 資格・要件 | 選任期限・報告 |
|---|---|---|---|
| 総括安全衛生管理者 | 100人以上 | 当該事業場において事業の実施を統括管理する者(=所長・支店長など。資格要件はない) | 事由発生から14日以内に選任し、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告 |
| 安全管理者 | 50人以上 | 厚生労働大臣の定める研修を修了した理科系の大学卒業+実務2年以上等、または労働安全コンサルタント | |
| 衛生管理者 | 50人以上 | 衛生管理者免許を有する者、医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント等 | |
| 産業医 | 50人以上 | 医師であって、厚生労働省令で定める要件を備えた者 | |
| 安全衛生推進者 | 10人以上50人未満 | 都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者等 | 14日以内に選任。労基署長への報告義務はない(氏名を作業場の見やすい箇所に掲示等で周知) |
| 安全委員会 | 50人以上(建設業) | 議長は総括安全衛生管理者等。委員の半数は労働者の過半数代表の推薦による | 毎月1回以上開催。議事録は3年間保存 |
| 衛生委員会 | 50人以上(全業種) | 同上 | 同上 |
- 総括安全衛生管理者
- その事業場のトップ(事業の実施を統括管理する者)が就く役職で、安全管理者・衛生管理者などを指揮し、危険・健康障害防止措置、教育、健康診断、労働災害の原因調査・再発防止対策などの業務を統括管理します。特別な資格や免許は不要です。
- 安全衛生委員会
- 安全委員会と衛生委員会の両方を設けなければならないときは、それぞれに代えて安全衛生委員会を設置することができます。建設業で常時50人以上なら、実務上はこの安全衛生委員会を置くのが一般的です。
3建設業の統括管理体制 ―「特定元方事業者」
ここからが建設業の本丸です。1つの場所で元請と下請の労働者が混在して作業する場合、その場所全体の安全管理を統括するための体制が必要になります。これが統括安全衛生責任者を頂点とする体制です。
| 選任者 | 選任するのは誰か | 選任が必要な規模 (元請・下請あわせた現場の労働者数) | 職務 |
|---|---|---|---|
| 統括安全衛生責任者 | 特定元方事業者 (=元請) | 常時50人以上 ※ずい道等の建設、圧気工法による作業、一定の橋梁(人口集中地区での道路・鉄道上の橋梁)の仕事は常時30人以上 | 元方安全衛生管理者を指揮し、第30条の統括管理事項(協議組織の設置運営、作業間の連絡調整、作業場所の巡視 等)を統括管理する。当該場所において事業の実施を統括管理する者(=所長)をもって充てる |
| 元方安全衛生管理者 | 特定元方事業者 (=元請) | 統括安全衛生責任者を選任した事業者(=上と同じ規模) | 統括安全衛生責任者が統括管理すべき事項のうち技術的事項を管理する。その事業場に専属の者で、理科系の大学卒+実務3年以上等の資格が必要 |
| 店社安全衛生管理者 | 特定元方事業者 (=元請の店社) | 統括安全衛生責任者の選任が不要な中小規模現場のうち、 ・ずい道等の建設、圧気工法、一定の橋梁 = 常時20人以上30人未満 ・主要構造部が鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物の建設 = 常時20人以上50人未満 | 当該現場を毎月1回以上巡視し、労働者の作業状況を把握。協議組織に随時参加し、計画届に基づく工事の実施状況を確認する |
| 安全衛生責任者 | 関係請負人(=下請) | 統括安全衛生責任者が選任された現場で、仕事を行う下請ごとに選任 | 統括安全衛生責任者との連絡、連絡を受けた事項の関係者への連絡、当該事項のうち自社に係るものの実施の管理、後次の請負人の安全衛生責任者との作業間の連絡調整 など |
・元請が選任=統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者・店社安全衛生管理者(「統括」「元方」「店社」は元請側)
・下請が選任=安全衛生責任者(「安全衛生責任者」だけが下請側)
「統・元・店は元請、責は下請」と唱えて覚えましょう。
4特定元方事業者が講ずべき措置 ―「協議・連絡調整・巡視」
安衛法第30条は、特定元方事業者が労働災害を防止するために講ずべき措置を列挙しています。第二次検定でもそのまま書けるので、6項目を丸ごと覚えてしまいましょう。
| № | 措置 | 試験で問われるポイント |
|---|---|---|
| ① | 協議組織の設置および運営 | 特定元方事業者とすべての関係請負人が参加する組織を設置し、会議を定期的に開催する |
| ② | 作業間の連絡および調整 | 随時、特定元方事業者と関係請負人との間および関係請負人相互間で行う |
| ③ | 作業場所の巡視 | 毎作業日に少なくとも1回行う(毎週1回ではない) |
| ④ | 関係請負人が行う労働者の安全衛生教育に対する指導および援助 | 教育を元請が代わって実施する義務ではない。教育の場所・資料の提供、講師の斡旋など「指導・援助」が義務 |
| ⑤ | 仕事の工程に関する計画、作業場所における機械・設備等の配置に関する計画の作成、機械・設備等を使用する作業に関し関係請負人が講ずべき措置についての指導 | クレーンの配置計画など。関係請負人への「指導」まで含む |
| ⑥ | その他労働災害を防止するため必要な事項 | クレーン等の運転の合図、事故現場等の標識、有機溶剤等の容器の集積箇所、警報の統一 等 |
- 協議組織
- いわゆる「災害防止協議会(安全衛生協議会)」のこと。特定元方事業者およびすべての関係請負人が参加する組織で、元請が設置・運営し、定期的に会議を開催しなければなりません。下請は、この協議組織に参加する義務があります(第32条・関係請負人の義務)。
- 関係請負人
- 元方事業者の当該事業の仕事が数次の請負契約によって行われるときの、当該請負人の請負契約の後次のすべての請負人をいいます。一次下請だけでなく、二次・三次下請も含みます。
また、注文者の義務として、建設物・設備・原材料等を、自ら使用させ、または請負人の労働者に使用させる場合は、労働災害を防止するための必要な措置を講じなければなりません(第31条)。足場や型枠支保工、くい打機、軌道装置などを下請に使わせる場合、その安全な状態を確保するのは注文者(元請)の義務です。
5作業主任者 ―「免許か技能講習か」
事業者は、労働災害を防止するための管理を必要とする作業で政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者または登録教習機関が行う技能講習を修了した者のうちから、作業主任者を選任しなければなりません(第14条)。
- 作業主任者
- その作業に従事する労働者の指揮、器具・工具・要求性能墜落制止用器具等の点検、保護具の使用状況の監視などを行う者。事業者は、作業主任者の氏名およびその者に行わせる事項を、作業場の見やすい箇所に掲示する等により関係労働者に周知させなければなりません。労働基準監督署長への選任報告は不要です。
土木施工で選任が必要な主な作業と、その資格区分は次のとおりです。「数値」と「免許/技能講習の別」が問われます。
| 作業 | 選任が必要となる規模 | 資格 |
|---|---|---|
| 高圧室内作業 | 大気圧を超える気圧下の作業室・シャフト内部での作業 | 免許 |
| ガス溶接作業 | アセチレン等を用いて行う金属の溶接・溶断・加熱 | 免許 |
| 地山の掘削作業 | 掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削 | 技能講習 |
| 土止め支保工作業 | 切りばり・腹起こしの取付け・取外し(高さの要件なし) | 技能講習 |
| 型枠支保工の組立て等 | 型枠支保工の組立て・解体(高さの要件なし) | 技能講習 |
| 足場の組立て等 | つり足場・張出し足場、または高さ5m以上の構造の足場の組立て・解体・変更 | 技能講習 |
| 鋼橋架設等 | 橋梁の上部構造(金属製の部材で構成)で、高さ5m以上のもの、または上部構造のうち支間30m以上である部分の架設・解体・変更 | 技能講習 |
| コンクリート橋架設等 | 上部構造(コンクリート造)で、高さ5m以上のもの、または上部構造のうち支間30m以上である部分の架設・変更 | 技能講習 |
| コンクリート造の工作物の解体等 | 高さ5m以上のコンクリート造の工作物の解体・破壊 | 技能講習 |
| 建築物等の鉄骨の組立て等 | 高さが5m以上の金属製の部材で構成される建築物の骨組み・塔の組立て・解体・変更 | 技能講習 |
| ずい道等の掘削等 | ずい道等の掘削、ずり積み、支保工の組立て、ロックボルトの取付け、コンクリート等の吹付け | 技能講習 |
| ずい道等の覆工 | 型枠支保工の組立て、移動・解体、コンクリートの打設等 | 技能講習 |
| 採石のための掘削 | 掘削面の高さが2m以上の採石法上の岩石の採取 | 技能講習 |
| 酸素欠乏危険作業 | ケーソン内部、井戸、マンホール、暗きょ、ピット等の内部での作業 | 技能講習 (第2種は酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習) |
| はい作業(はいの高さ2m以上) | はいのはい付け・はい崩しの作業 | 技能講習 |
| 木造建築物の組立て等 | 軒の高さ5m以上の木造建築物の構造部材の組立て等 | 技能講習 |
| 石綿等を取り扱う作業 | 石綿等の除去・封じ込め・囲い込み等 | 技能講習 |
| 有機溶剤・特定化学物質作業 | 屋内作業場等での取扱い | 技能講習 |
・地山の掘削=2m以上(採石も2m以上)
・足場・鋼橋・コン橋・コンクリート造工作物の解体・鉄骨=5m以上
・橋梁の支間=30m以上
そして土止め支保工と型枠支保工には数値要件がない(規模を問わず必要)――ここが最頻出のひっかけポイントです。
6就業制限と安全衛生教育 ―「免許・技能講習・特別教育」
6-1 就業制限(第61条)
事業者は、クレーンの運転その他の業務で政令で定めるものについては、都道府県労働局長の免許を受けた者、技能講習を修了した者等でなければ、当該業務に就かせてはなりません。当該業務に従事するときは、これに係る免許証その他資格を証する書面を携帯しなければなりません。
| 業務 | 免許 | 技能講習 | 特別教育 |
|---|---|---|---|
| 移動式クレーンの運転 | つり上げ荷重5t以上 | つり上げ荷重1t以上5t未満(小型移動式クレーン運転技能講習) | つり上げ荷重1t未満 |
| クレーン・デリックの運転 | つり上げ荷重5t以上 | ―(床上操作式は技能講習) | つり上げ荷重5t未満 |
| 玉掛けの業務 | ― | つり上げ荷重1t以上のクレーン等の玉掛け | つり上げ荷重1t未満 |
| 車両系建設機械(整地・運搬・積込み用、掘削用、基礎工事用、解体用)の運転 | ― | 機体重量3t以上 | 機体重量3t未満 |
| 高所作業車の運転 | ― | 作業床の高さ10m以上 | 作業床の高さ10m未満 |
| フォークリフトの運転 | ― | 最大荷重1t以上 | 最大荷重1t未満 |
| ガス溶接 | ガス溶接作業主任者免許(作業主任者) | ガス溶接技能講習(業務) | ― |
| 発破の作業(せん孔、装てん、結線、点火 等) | 発破技士免許 | ― | ― |
6-2 安全衛生教育(第59条・第60条)
| 教育の種類 | 対象 | ポイント |
|---|---|---|
| 雇入れ時の教育 | 労働者を雇い入れたとき | 従事する業務に関する安全・衛生のための教育。日雇い労働者・パートも対象 |
| 作業内容変更時の教育 | 労働者の作業内容を変更したとき | 雇入れ時と同じ内容 |
| 特別教育 | 政令で定める危険・有害業務に労働者を就かせるとき | アーク溶接、つり上げ荷重1t未満のクレーン運転・玉掛け、機体重量3t未満の車両系建設機械の運転、酸素欠乏危険場所での作業、足場の組立て等の作業(作業主任者を除く)、フルハーネス型墜落制止用器具を用いた高さ2m以上の作業 など。特別教育の記録は3年間保存 |
| 職長等の教育 | 新たに職務に就くこととなった職長その他の作業中の労働者を直接指導・監督する者(作業主任者を除く) | 建設業は対象。教育事項=作業方法の決定・労働者の配置、労働者に対する指導・監督の方法、危険性・有害性等の調査(リスクアセスメント)、異常時等における措置 など |
7計画の届出 ―「14日前」と「30日前」
安衛法では、危険・有害な仕事や機械の設置について、あらかじめ計画を届け出させる制度があります。届出先と日数の組合せが試験の中心です。
7-1 厚生労働大臣への届出(30日前)
特に大規模な建設工事は、仕事の開始の日の30日前までに厚生労働大臣に届け出ます(第88条2項)。
- 高さ300m以上の塔の建設
- 堤高150m以上のダムの建設
- 最大支間500m以上(つり橋は1,000m以上)の橋梁の建設
- 長さ3,000m以上のずい道等の建設
- 長さ1,000m以上3,000m未満のずい道等の建設で、深さ50m以上のたて坑(通路として用いるもの)の掘削を伴うもの
- ゲージ圧力0.3MPa以上の圧気工法による作業を行う仕事
7-2 労働基準監督署長への届出(工事の計画・14日前)
次の仕事を行う事業者(=元請)は、工事の開始の日の14日前までに、所轄労働基準監督署長に計画を届け出ます(第88条3項)。
| 工事 | 規模 |
|---|---|
| 建築物・工作物(橋梁を除く)の建設・改造・解体・破壊 | 高さ31mを超えるもの |
| 橋梁の建設等 | 最大支間50m以上(人口集中地区で道路・鉄道上空の場合は最大支間30m以上50m未満も対象) |
| ずい道等の建設等 | 規模を問わず(ただし、たて坑の深さ・掘削断面積が一定以下の小規模なものを除く) |
| 掘削の高さ・深さ | 10m以上の地山の掘削 |
| 圧気工法による作業 | すべて |
| 石綿等の除去等の作業 | 吹付け石綿の除去、石綿含有保温材等の除去 等 |
| 廃棄物焼却炉の解体等 | ダイオキシン類のばく露のおそれのある解体・破砕作業 |
| 坑内掘りによる土石の採取のための掘削 | すべて |
7-3 機械等の設置届(30日前)
一定の機械等を設置・移転・変更しようとするときは、その工事の開始の日の30日前までに、所轄労働基準監督署長に届け出ます(第88条1項)。
| 機械等 | 届出が必要な規模 |
|---|---|
| 足場 | つり足場・張出し足場以外の足場は高さ10m以上で、かつ組立てから解体までの期間が60日以上のもの |
| 型枠支保工 | 支柱の高さが3.5m以上のもの |
| 架設通路 | 高さ・長さがそれぞれ10m以上で、設置期間60日以上のもの |
| クレーン | つり上げ荷重3t以上(設置届) |
| デリック | つり上げ荷重2t以上 |
| エレベーター | 積載荷重1t以上 |
| 建設用リフト | 積載荷重0.25t以上で、ガイドレールの高さが18m以上 |
| ゴンドラ | すべて(設置届) |
8健康診断・作業環境測定・報告 ―「事業者の義務」
8-1 健康診断(第66条)
| 種類 | 対象・時期 |
|---|---|
| 雇入時の健康診断 | 常時使用する労働者を雇い入れるとき |
| 定期健康診断 | 常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回 |
| 特定業務従事者の健康診断 | 深夜業、坑内労働などに常時従事する労働者に対し、当該業務への配置替えの際および6か月以内ごとに1回 |
| 特殊健康診断 | 高気圧業務、有機溶剤、特定化学物質、石綿、鉛、四アルキル鉛等の有害業務従事者に対し、6か月以内ごとに1回(一部は異なる) |
| 健康診断結果の報告 | 常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断の結果を所轄労働基準監督署長に報告(特殊健康診断は人数にかかわらず報告) |
| 記録の保存 | 健康診断個人票を作成し、5年間保存(特殊健診は種類により30年・40年) |
事業者は、健康診断の結果、異常の所見があると診断された労働者について、医師の意見を聴き、必要があると認めるときは就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の措置を講じなければなりません(第66条の5)。また、健康診断を受けた労働者に対して、遅滞なくその結果を通知しなければなりません。
8-2 作業環境測定(第65条)
事業者は、有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で政令で定めるものについて、必要な作業環境測定を行い、その結果を記録しなければなりません。土木で関係するのは次のようなものです。
- 坑内の作業場:炭酸ガス濃度(1か月以内ごとに1回)、気温(半月以内ごとに1回)、通気量(半月以内ごとに1回)
- 酸素欠乏危険場所:作業開始前に酸素濃度(第2種は硫化水素濃度も)を測定(酸素濃度18%以上、硫化水素濃度10ppm以下に保つよう換気)
- 粉じんを著しく発散する屋内作業場:6か月以内ごとに1回
- 高温・多湿の坑内などの気積・換気
8-3 労働者死傷病報告・事故報告
| 報告 | 提出期限 |
|---|---|
| 労働者死傷病報告(休業4日以上または死亡) | 遅滞なく所轄労働基準監督署長に提出 |
| 労働者死傷病報告(休業4日未満) | 四半期ごと(1~3月、4~6月、7~9月、10~12月分を、それぞれの期間の最後の月の翌月末日まで)に提出 |
| 事故報告(人的被害がなくても、クレーンの倒壊、足場の崩壊、ずい道の落盤等) | 遅滞なく提出 |
また、労働災害その他就業中の事故により労働者が死亡し、または休業したときは、事業者は遅滞なく報告しなければなりません。「労災保険の給付を受けたときに報告する」わけではありません。
8-4 安全衛生改善計画・危険性等の調査
事業者は、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、または作業行動その他業務に起因する危険性または有害性等を調査(リスクアセスメント)し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるよう努めなければなりません(第28条の2)。建設業では努力義務である点に注意しましょう(一定の化学物質については義務)。
9頻出ひっかけ総まとめ
過去問で実際に「✕の選択肢」として出された文章の形でまとめます。すべて誤りです。右列を隠して、どこが違うかを説明できるようにしてください。
| ひっかけ文(すべて ✕) | 正しい知識 |
|---|---|
| 安全衛生責任者は、特定元方事業者(元請)が選任しなければならない | 関係請負人(下請)が選任する。元請が選任するのは統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者 |
| ずい道等の建設の仕事では、常時50人以上の場合に統括安全衛生責任者を選任する | ずい道等・圧気工法・一定の橋梁は常時30人以上(その他は50人以上) |
| 店社安全衛生管理者は、当該現場を毎作業日に1回以上巡視する | 店社安全衛生管理者は毎月1回以上。毎作業日1回以上巡視するのは特定元方事業者(作業場所の巡視) |
| 特定元方事業者は、関係請負人が行う安全衛生教育を代わって実施しなければならない | 義務は「指導および援助」(場所・資料の提供等)であり、代行義務ではない |
| 作業間の連絡および調整は、毎週1回行わなければならない | 随時行う。定期的に開催するのは協議組織の会議 |
| 土止め支保工の切りばりの取付け作業は、深さ2m以上の場合に作業主任者を選任する | 土止め支保工・型枠支保工の作業主任者に規模(数値)要件はない。2m以上は地山の掘削 |
| 足場の組立て等作業主任者は、高さ2m以上の足場の組立て作業で選任する | つり足場・張出し足場、または高さ5m以上の足場(2mは特別教育・安全帯等の基準) |
| 地山の掘削作業主任者は、免許を受けた者から選任する | 技能講習修了者。免許が必要な作業主任者は高圧室内・ガス溶接など |
| 作業主任者を選任したときは、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告する | 報告義務はない。氏名と職務を作業場の見やすい箇所に掲示等で周知する |
| 機体重量3t以上の車両系建設機械の運転業務には、免許が必要である | 技能講習修了者で足りる。免許が必要なのはつり上げ荷重5t以上のクレーン等 |
| つり上げ荷重が1t以上5t未満の移動式クレーンの運転には、特別教育で足りる | 小型移動式クレーン運転技能講習が必要。特別教育で足りるのは1t未満 |
| 掘削の高さ・深さが5m以上の地山の掘削の仕事は、計画届の対象である | 10m以上(第88条3項)。5mではない |
| 型枠支保工(支柱の高さ3.5m以上)の設置届は、工事開始の14日前までに提出する | 機械等の設置届は30日前まで(第88条1項)。14日前は工事の計画届(同3項) |
| 高さ31m以上の建築物の建設の仕事は、計画届が必要である | 正しくは高さ31mを「超える」建築物。「以上」と「超える」の違いに注意 |
| 安全衛生推進者を選任したときは、遅滞なく所轄労働基準監督署長に報告しなければならない | 安全衛生推進者に報告義務はない(掲示等により関係労働者に周知) |
| 総括安全衛生管理者は、常時50人以上の労働者を使用する建設業の事業場で選任する | 100人以上(建設業)。50人以上は安全管理者・衛生管理者・産業医・委員会 |
| 労働者が休業4日未満の負傷をした場合、労働者死傷病報告は不要である | 四半期ごとにまとめて報告が必要。4日以上・死亡は遅滞なく |
| 酸素欠乏危険作業では、空気中の酸素濃度を16%以上に保つよう換気する | 18%以上(第2種は硫化水素10ppm以下も) |
| 元方安全衛生管理者は、関係請負人が選任し、技術的事項を管理する | 選任するのは特定元方事業者(元請)。その事業場に専属の者であることが必要 |
| 就業制限業務に従事するときは、資格を証する書面を事業場に備え付ければよい | 従事する者は当該書面を携帯していなければならない(第61条3項) |
10章末チェック ― 一問一答10問
答えを隠して○×で解き、そのあと解説を読んでください。10問中8問正解できれば、本試験でも安衛法は得点源になります。
- 建設業の事業場では、常時100人以上の労働者を使用する場合に総括安全衛生管理者を選任しなければならない。
答: ○ ― 建設業は100人以上です。総括安全衛生管理者は、当該事業場においてその事業の実施を統括管理する者を充て、特別な資格は不要です。 - ずい道等の建設の仕事では、元請・下請あわせて常時50人以上の労働者が従事する場合に統括安全衛生責任者を選任する。
答: ✕ ― ずい道等の建設、圧気工法による作業、一定の橋梁の建設は「常時30人以上」です。危険性の高い工事ほど基準人数が少なくなります。 - 安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者以外の請負人(下請)が選任し、統括安全衛生責任者との連絡等を行う。
答: ○ ― 安全衛生責任者は下請側の役職です。職務の中心は「統括安全衛生責任者との連絡」「連絡事項の関係者への連絡」「自社に係る事項の実施の管理」です。 - 特定元方事業者は、作業場所の巡視を毎週1回以上行わなければならない。
答: ✕ ― 特定元方事業者の作業場所の巡視は毎作業日に少なくとも1回です。毎月1回以上なのは店社安全衛生管理者の巡視です。 - 掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削の作業では、地山の掘削作業主任者技能講習を修了した者のうちから作業主任者を選任しなければならない。
答: ○ ― 2m以上・技能講習です。なお、土止め支保工作業主任者・型枠支保工の組立て等作業主任者には数値の要件がありません。 - 高さ5m以上のコンクリート造の工作物の解体作業では、作業主任者を選任しなければならない。
答: ○ ― コンクリート造の工作物の解体等作業主任者技能講習修了者から選任します。「5m」は足場・鋼橋架設・コンクリート橋架設・鉄骨の組立てとも共通の数値です。 - つり上げ荷重が1t以上5t未満の移動式クレーンの運転業務は、特別教育を修了した者を就かせることができる。
答: ✕ ― 小型移動式クレーン運転技能講習の修了が必要です。特別教育で足りるのはつり上げ荷重1t未満です。 - 最大支間50m以上の橋梁の建設の仕事を行う事業者は、その計画を工事開始の日の14日前までに所轄労働基準監督署長に届け出なければならない。
答: ○ ― 第88条3項の工事の計画届で、14日前です。ほかに、高さ31mを超える建築物、ずい道等の建設、掘削の高さ・深さ10m以上などが対象です。 - 支柱の高さが3.5m以上の型枠支保工を設置する場合、工事開始の日の14日前までに所轄労働基準監督署長に届け出る。
答: ✕ ― 型枠支保工は機械等の設置届(第88条1項)なので30日前までです。同じ労基署長宛てでも、工事の計画は14日前、機械等は30日前です。 - 労働者が労働災害により死亡し、または休業4日以上の休業をしたときは、事業者は遅滞なく労働者死傷病報告を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。
答: ○ ― 休業4日以上・死亡は遅滞なく。休業4日未満は四半期ごとにまとめて提出します(提出不要ではありません)。
不明な点があれば、Q&Aで質問してみよう
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