「建築基準法」を徹底攻略!
土木の主戦場は「仮設建築物の緩和」と「工事現場の危害防止」
1級土木施工管理技士の第一次検定では、「法規」から例年12問が出題され、そのうち8問を選択解答します。その中で建築基準法は1問。「土木の試験なのに、なぜ建築の法律?」と面食らう方が多い分野ですが、出題される論点は驚くほど限定されていて、実は最も少ない勉強量で1点になる法令です。
なぜなら、土木の受験生に問われるのは建築の設計知識ではないからです。狙われるのは、① 用語の定義(建築物・主要構造部・大規模の修繕・建築 など)、② 仮設建築物に対する制限の緩和(第85条)、③ 工事現場の危害の防止(第90条:仮囲い1.8m、落下物の防護)の3つ。とくに②と③は、土木の工事現場に建てるプレハブの現場事務所・下小屋・材料置場の話であり、受験生が毎日目にしている現場そのものが題材です。
逆にいえば、建蔽率・容積率・斜線制限といった「建築士が悩むところ」は、土木では深入り不要です。この記事では、土木にとって必要な範囲に絞って建築基準法を体系化します。定義 → 手続(確認・検査)→ 単体規定と集団規定 → 仮設緩和 → 現場の危害防止、の順に読めば、建築基準法の1問は確実に取れます。ひっかけ総まとめと一問一答10問まで通してください。
1建築基準法の目的と全体像 ―「単体規定」と「集団規定」
1-1 目的(第1条)
建築基準法の目的は、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康および財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することです。
ここで大事なのは「最低の基準」という言葉です。建築基準法は「理想の建物」を定めているのではなく、「これだけは守らないと危ない」というギリギリのラインを定めているにすぎません。だから、これを下回る建物は建てられないのです。「最高の基準」「望ましい基準」と書き換える選択肢は✕です。
1-2 単体規定と集団規定 ― 建築基準法を貫く二分法
建築基準法の規定は、大きく2つに分かれます。この区別が理解できていないと、第85条の仮設緩和が絶対に理解できません。
| 区分 | 何を守るための規定か | 適用範囲 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 単体規定 (第2章) | 建物の中にいる人の安全(その建物自体の安全性) | 全国どこでも適用 | 構造耐力、防火・避難(防火壁、非常用進入口、避雷設備)、居室の採光・換気、階段、便所、シックハウス対策 など |
| 集団規定 (第3章) | まちなみ・周囲の環境(近隣との関係) | 都市計画区域および準都市計画区域内のみ | 道路(接道義務)、用途地域、建蔽率、容積率、高さ制限(斜線制限・絶対高さ)、日影規制、防火地域・準防火地域 など |
- 単体規定(たんたいきてい)
- 建物「単体」の安全性に関する規定。建物が倒れない、燃えない、逃げられる、健康に住めることを担保します。全国すべての建築物に適用されます(山奥の一軒家でも適用)。
- 集団規定(しゅうだんきてい)
- 建物が「集団」として建ち並ぶときのルール。道路の確保、日照・通風、まちなみの秩序を守ります。都市計画区域および準都市計画区域の内側でしか適用されません。だから、都市計画区域外の田畑に建てる小屋には、接道義務も建蔽率もかかりません。
工事現場の仮設事務所は、「まちなみを乱すか?」→ 乱さない(すぐ撤去する)ので、集団規定(第3章)はまるごと適用除外。
しかし、「中で働く人が下敷きになったら?」→ 死ぬので、構造耐力(第20条)は適用される。
「集団規定は免除、構造耐力は免除しない」――この一言で第85条は解けます(防火壁・避雷設備などの防火系単体規定も免除される点は、第7章で詳しく整理します)。
2用語の定義① ― 建築物・特殊建築物・建築設備・居室
建築基準法第2条は、用語の定義を延々と並べています。試験に出るのはそのごく一部です。ここでは土木で問われるものだけを、正確に押さえます。
- 建築物
- 土地に定着する工作物のうち、屋根および柱もしくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む)、これに附属する門・塀、観覧のための工作物、地下・高架の工作物内に設ける事務所・店舗・興行場・倉庫等、およびこれらに附属する建築設備をいいます。
重要:「屋根+(柱または壁)」が要件です。
・建築物にあたるもの:プレハブの現場事務所、下小屋、屋根付きの資材倉庫、門・塀(建築物に附属するもの)、地下街の店舗、高架下の店舗
・建築物にあたらないもの:鉄道の線路敷地内の運転保安に関する施設、跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽(サイロ・タンク)など - 特殊建築物
- 学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物。
不特定多数が利用する、または危険性が高い用途のもの。一戸建ての住宅・事務所は特殊建築物ではありません。 - 建築設備
- 建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙、汚物処理の設備、煙突、昇降機(エレベーター)、避雷針をいいます。建築設備は建築物の一部とみなされます。
- 居室
- 居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室。
「継続的に使用する」がキーワード。したがって、便所、浴室、洗面所、更衣室、廊下、階段、物置、機械室は居室ではありません。事務室、会議室、教室、病室、作業場、リビングは居室です。居室には採光・換気の基準がかかります。
3用語の定義② ― 主要構造部・構造耐力上主要な部分・延焼のおそれのある部分
ここは似た名前の2つの用語が並ぶ、建築基準法最大の混乱ポイントです。目的がまったく違うことを理解すれば、暗記は不要になります。
| 用語 | 目的 | 含まれるもの | 含まれないもの |
|---|---|---|---|
| 主要構造部 (第2条五号) | 防火(火事のときに建物が持ちこたえるか) | 壁、柱、床、はり、屋根、階段 | 基礎、間仕切壁、間柱、附け柱、最下階の床、小ばり、ひさし、屋外階段、局部的な小階段 など |
| 構造耐力上主要な部分 (施行令第1条三号) | 構造(力学)(建物が自重・地震・風で壊れないか) | 基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい・方づえ等)、床版、屋根版、横架材(はり・けた等) | 階段、間仕切壁(構造耐力を負担しないもの)など |
主要構造部(防火) → 「階段」は入るが「基礎」は入らない
構造耐力上主要な部分(構造) → 「基礎」は入るが「階段」は入らない
理由は明快です。火事のときは階段が燃え落ちたら逃げられない(だから防火の対象)。でも基礎は地中にあって燃えない(だから防火の対象外)。逆に、建物を支えているのは基礎(だから構造の対象)。でも階段は建物を支えていない(だから構造の対象外)。
「防火は階段、構造は基礎」と唱えましょう。
- 延焼のおそれのある部分
- 隣地境界線、道路中心線、または同一敷地内の2以上の建築物相互の外壁間の中心線から、
・1階にあっては 3m 以下
・2階以上にあっては 5m 以下
の距離にある建築物の部分をいいます。隣の家が燃えたときに、もらい火をしやすい部分のこと。この部分には防火戸などの防火設備が必要になります。
「1階3m・2階以上5m」は必ず数字で問われます。 - 耐火構造・準耐火構造・防火構造
- 耐火構造=火災が終わるまで倒壊・延焼しない構造(鉄筋コンクリート造など)。準耐火構造=それに準ずる構造。防火構造=建築物の外壁・軒裏について、周囲からの延焼を抑制するための構造。防火構造は「もらい火を防ぐ」ためのものであり、耐火構造より要求が低い点に注意。
- 不燃材料・準不燃材料・難燃材料
- 加熱開始後、燃焼せず・変形せず・有害な煙やガスを発生しない時間が、不燃材料=20分、準不燃材料=10分、難燃材料=5分。「不20・準10・難5」と覚えます。
4用語の定義③ ― 建築・大規模の修繕・大規模の模様替
- 建築
- 建築物を新築し、増築し、改築し、または移転することをいいます。この4つだけです。
・新築=更地に新しく建てる
・増築=既存建築物の床面積を増やす(同一敷地内に別棟を建てる場合も増築)
・改築=除却した部分と用途・規模・構造の著しく異ならない建築物を建てる(建て替え)
・移転=同一敷地内で位置を移すこと
注意:「大規模の修繕」「大規模の模様替」は”建築”には含まれません(別の概念)。ただし、どちらも建築確認の対象にはなります。 - 大規模の修繕
- 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕。
「修繕」=既存と同じ材料・仕様で造り直すこと。「過半」=その部位の半分を超えること。
例:屋根の半分を超える範囲を、同じ瓦で葺き替える → 大規模の修繕 - 大規模の模様替
- 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替。
「模様替」=既存と異なる材料・仕様で造り替えること(性能・品質は同等以上)。
例:木造の屋根の半分を超える部分を、金属板に葺き替える → 大規模の模様替 - 設計者・工事施工者・建築主
- 建築主=建築物に関する工事の請負契約の注文者、または請負契約によらないで自ら工事をする者。
設計者=その者の責任において設計図書を作成した者。
工事施工者=建築物に関する工事の請負人、または請負契約によらないで自らこれらの工事をする者。
工事監理者=建築士法に規定する工事監理をする者(=設計図書のとおりに施工されているかを確認する建築士)。 - 敷地
- 1の建築物または用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地。1つの敷地に1つの建築物が原則です(一敷地一建築物の原則)。
「大規模の修繕」「大規模の模様替」は“建築”ではない――でも建築確認は必要。この「建築ではないが確認は要る」というねじれが、そのまま選択肢になります。
なお、移転は「同一敷地内」での移動に限られます。別の敷地に移すのは、元の敷地では除却、移転先では新築の扱いになります。
5建築確認と検査 ―「4日以内」「7日以内」
5-1 建築確認の流れ
建築確認とは、建築物を建てる前に、その計画が建築基準関係規定に適合しているかを、建築主事または指定確認検査機関にチェックしてもらう手続です。
- 建築主事(けんちくしゅじ)
- 建築確認・完了検査などを行うために、都道府県・市町村に置かれる公務員。確認済証・検査済証を交付します。近年は、民間の指定確認検査機関が確認・検査を行うことも一般的です。
- 確認済証・検査済証
- 確認済証=建築確認に合格したことを証する書面。これの交付を受けた後でなければ、工事に着手できません。
検査済証=完了検査に合格したことを証する書面。原則としてこの交付を受けた後でなければ、建築物を使用できません(一定規模のものについて)。
| 手続 | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 建築確認申請 | 建築主が、工事着手前に建築主事等へ確認申請書を提出 | 着工前(確認済証の交付前は工事に着手できない) |
| 中間検査 | 特定工程(3階建て以上の共同住宅の床・はりの配筋工事など)の工事を終えたときは、4日以内に中間検査を申請 | 特定工程終了から4日以内に申請 |
| 完了検査 | 工事を完了したときは、建築主は建築主事等の検査を申請 | 工事完了から4日以内に到達するように申請 |
| 検査の実施 | 建築主事等は、申請を受理した日から検査を行う | 受理日から7日以内に検査 |
| 検査済証の交付 | 適合していると認めたときは検査済証を交付 | ― |
| 工事完了後の使用制限 | 一定の建築物(特殊建築物等)は、検査済証の交付を受けた後でなければ使用できない(仮使用の承認を受けた場合等を除く) | ― |
工事が終わったら4日以内に検査を申請し(申請書が4日以内に到達するように出す)、受理した建築主事等は7日以内に検査する。「ヨッカ・ナノカ」とセットで覚えます。
5-2 工事現場に掲げる標識
建築基準法第89条により、建築確認を受けた工事の施工者は、工事現場の見やすい場所に、建築主・設計者・工事施工者・工事現場管理者の氏名または名称、および当該工事に係る確認があった旨の表示(建築基準法による確認済 の表示板)をしなければなりません。
また、工事施工者は、設計図書を工事現場に備えておかなければなりません(第89条2項)。
6集団規定 ― 道路・接道義務・建蔽率・容積率・高さ制限
集団規定は都市計画区域および準都市計画区域内でのみ適用されます。土木では深入り不要ですが、道路の定義と接道義務、建蔽率・容積率の意味だけは押さえておきましょう(第85条の仮設緩和で「何が免除されるのか」を理解するために必要です)。
6-1 建築基準法上の「道路」(第42条)
- 建築基準法上の道路
- 原則として、幅員4m以上のもの(特定行政庁が指定する区域内では6m以上)。道路法による道路、都市計画法等による道路、既存道路、位置指定道路 などが含まれます。
- 2項道路(みなし道路)
- 建築基準法が適用された時点ですでに建物が建ち並んでいた、幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したもの。道路の中心線から水平距離2mずつ後退した線を道路の境界線とみなします(これをセットバックといいます)。
→ つまり、建て替えのときに敷地を後退させて、将来的に幅員4mを確保していく仕組みです。 - 接道義務(第43条)
- 建築物の敷地は、道路に2m以上接しなければならない(自動車専用道路等を除く)。
理由:火災のときに消防車が入り、人が逃げられるようにするため。
2項道路のセットバックは中心線から2mずつ(合計4m)。これも「4m」に帰着します。
6-2 建蔽率・容積率・高さ制限
| 用語 | 定義 | 目的 |
|---|---|---|
| 建蔽率(けんぺいりつ) | 建築面積 ÷ 敷地面積の割合の最高限度 | 敷地に空地を確保し、延焼防止・通風・採光を図る |
| 容積率(ようせきりつ) | 延べ面積 ÷ 敷地面積の割合の最高限度 | 建物のボリューム(=人口・交通量)を抑え、インフラの容量とバランスさせる |
| 絶対高さ制限 | 第一種・第二種低層住居専用地域等では、建築物の高さは10mまたは12mのうち都市計画で定めた限度以下 | 低層住宅地の良好な環境を守る |
| 道路斜線制限 | 前面道路の反対側の境界線から、一定の勾配で引いた斜線の内側に建物を収める | 道路の採光・通風を確保する |
| 隣地斜線制限 | 隣地境界線上の一定の高さから、一定の勾配で引いた斜線の内側に収める | 隣地の日照・通風を確保する |
| 北側斜線制限 | 低層・中高層住居専用地域で、真北方向の隣地の日照を守るための斜線制限 | 北側隣地の日照を守る |
| 日影規制 | 中高層建築物が、冬至日の一定時間帯に隣地に落とす日影の時間を制限する | 周辺の日照を守る |
6-3 防火地域・準防火地域・既存不適格
- 防火地域・準防火地域
- 都市計画で定められる、市街地における火災の危険を防除するための地域。建築物の規模に応じて耐火建築物・準耐火建築物とすることが義務づけられます。防火地域のほうが規制が厳しい(駅前・商業地の中心部など)。
- 既存不適格建築物
- 建築時には適法だったが、その後の法改正や都市計画の変更により、現行法の規定に適合しなくなった建築物。
重要:既存不適格建築物は「違法建築物」ではありません。建築基準法の規定は適用しない(第3条2項)とされています。ただし、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替を行う場合には、原則として現行法に適合させる必要が生じます。
7仮設建築物に対する制限の緩和(第85条)― 土木の最頻出
ここが土木の受験生にとって最重要の章です。建築基準法の問題で、この論点が出題される確率は極めて高く、ここだけ完璧にしておけば1点になることも珍しくありません。
7-1 第85条とは
建築基準法第85条第2項は、工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場その他これらに類する仮設建築物について、建築基準法の多くの規定を適用しないと定めています。
- 工事現場の仮設建築物(第85条第2項)
- 工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場その他これらに類する仮設建築物。
土木の現場でいえば、プレハブの現場事務所、休憩所、鉄筋加工場(下小屋)、資材倉庫、仮設の作業員宿舎などが該当します。
なぜ緩和されるのか:工事が終われば撤去される一時的な建物だからです。まちなみの秩序や日照を長期的に損なうものではありませんし、いちいち建築確認を取っていたら工事が進みません。
7-2 適用されない規定(免除されるもの)
| 免除される規定 | 内容 |
|---|---|
| 建築確認(第6条)・完了検査(第7条) | 確認申請も検査も不要。現場事務所を建てるのに建築確認は要りません |
| 建築工事届・除却届(第15条) | 不要 |
| 敷地の衛生・安全(第19条) | 不要 |
| 接道義務(第43条) | 道路に2m以上接していなくてもよい |
| 建蔽率(第53条)・容積率(第52条) | 敷地いっぱいに建ててもよい |
| 高さ制限・斜線制限・日影規制(第55〜56条の2) | 不要 |
| 防火地域・準防火地域内の建築物の制限(第61条・第62条) | 防火地域内でも、耐火建築物にしなくてよい |
| 用途地域による用途の制限(第48条) | 住居専用地域内でも現場事務所を建てられる |
| 外壁の後退距離、日影規制、その他集団規定(第3章)の全部 | 不要 |
| 大規模建築物の主要構造部(第21条)・屋根(第22条)・外壁(第23条) | 不要 |
| 防火壁等(第26条) | 不要(延べ面積1,000㎡超でも防火壁の区画は求められない) |
| 便所(第31条)・避雷設備(第33条)・非常用の昇降機(第34条2項) | 不要(高さ20mを超えても避雷設備は不要) |
| 特殊建築物等の避難・非常用の進入口(第35条) | 不要 |
| 建築材料の品質(第37条) | 不要 |
ただし、防火地域または準防火地域内にある延べ面積が50㎡を超える仮設建築物については、屋根の構造に関する規定(第62条)は適用されます(第85条第2項ただし書)。
7-3 適用される規定(免除されないもの)―【最重要】
ここが本命です。仮設だからといって、何でも許されるわけではありません。建物が倒れる・中の環境が保てない、といった規定は仮設建築物にも適用されます。
| 適用される規定 | 内容 |
|---|---|
| 構造耐力(第20条) | 自重・積載荷重・積雪・風圧・地震に対して安全な構造でなければならない。プレハブが台風で飛んだり、雪で潰れたりしてはいけない。第85条第2項の適用除外リストに第20条は入っていない |
| 居室の採光・換気(第28条)等の一般構造・衛生規定 | 適用される(居室の環境確保に関する規定) |
| 電気設備(第32条) | 適用される |
| 防火地域・準防火地域内で延べ面積50㎡超の場合の屋根(第62条) | 第85条第2項ただし書により適用される |
| 工事現場の危害の防止(第90条) | 当然に適用(次章参照) |
判断に迷ったら、「これがなければ、建物そのものが倒れて中の人が下敷きになるか?」と自問してください。建築確認は要らないが、構造耐力は要る――「手続と防火の網は緩めるが、倒れない・飛ばないという最低線は譲らない」のが第85条の考え方です。「構造耐力は適用される」の一点だけは、絶対に落とさないでください。
7-4 期間の制限がある仮設建築物(第85条第5項)
なお、仮設興行場、博覧会建築物、仮設店舗など、工事現場の仮設建築物以外の仮設建築物については、特定行政庁の許可を受けて、1年以内(一定のものは1年を超える)の期間を定めて建築することができます。工事現場の仮設建築物(第85条第2項)は、この「許可」も不要である点が異なります。
8工事現場の危害の防止(第90条)― 仮囲い1.8m・落下物の防護
建築基準法第90条は、「建築物の建築、修繕、模様替または除却のための工事の施工者は、当該工事の施工に伴う地盤の崩落、建築物または工事用の工作物の倒壊等による危害を防止するために必要な措置を講じなければならない」と定めています。具体的な基準は建築基準法施行令 第7章の8(第136条の2の20〜)にあります。
8-1 仮囲い(施行令第136条の2の20)
- 仮囲い
- 工事現場の周囲に設ける囲い。工事中の飛来落下物・粉じんから通行人を守り、第三者の立入りを防ぐためのもの。
設置義務:木造の建築物で高さ13m もしくは軒の高さ9m を超えるもの、または木造以外の建築物で2以上の階数を有するものについて、工事を行う場合は、その周囲に高さ1.8m以上の仮囲いを設けなければなりません。
「1.8m以上」は必ず問われます。「1.5m」「2.0m」に書き換えるのが定番のワナ。
8-2 落下物に対する防護(施行令第136条の5)
工事現場から物が落ちてきて通行人に当たる――これを防ぐための規定です。
| 場面 | 必要な措置 |
|---|---|
| 工事現場の境界線から水平距離5m以内で、かつ地盤面から高さ3m以上の場所から物を投下する場合 | ダストシュートを用いる等、落下物による危害を防止するための措置を講じなければならない。上から直接放り投げるのは禁止 |
| 工事現場の境界線から水平距離5m以内で、かつ地盤面から高さ7m以上にあるくさび等から、飛来・落下のおそれのある場合 | 工事現場の周囲、その他危害防止上必要な部分を、鉄網または帆布(防護シート)でおおう等の措置を講ずる |
| はね出し足場・防護棚(朝顔) | 飛来落下物を受け止めるため、足場から水平方向に張り出した防護棚を設ける |
「1.8・3・7・5」と唱えます。とくに「3m以上の高さから物を投下する場合はダストシュート等」は、労働安全衛生法にも同旨の規定(3m以上の高所からの投下には投下設備を設け、監視人を置く)があり、両方の法律で問われます。
8-3 根切り工事・山留め工事等(施行令第136条の3)
土木の受験生にとって身近な規定です。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 建築物・工作物の基礎の危害防止 | 建築物の建築等の工事における根切り・山留めについて、あらかじめ地下の埋設物等の調査を行い、これらを移設するなどの措置を講じる |
| 根切り工事 | 根切り・山留めの工事は、地盤の状況に応じて安全な方法で行う。がけ・斜面に近接する場合は、その安全を確かめる |
| 山留め工事 | 山留めを設ける場合は、土圧に対して安全な構造とする。切ばり・矢板・腹起し等の部材の応力度が、許容応力度を超えないようにする |
| 点検 | 山留めについて、その架構の全体にわたって定期的に点検し、部材の変形・緊結部の緩み等を確認する。周辺地盤の沈下・地下水位の変動を観測する |
| 基礎工事用機械の転倒防止 | くい打機・くい抜機・アースドリル等の基礎工事用機械、および移動式クレーンを使用する場合は、敷板・敷角の使用等により転倒を防止する措置を講ずる |
労働安全衛生法=現場で働く「労働者」を守る
建築基準法第90条=現場の外にいる「第三者(通行人・近隣)」も守る
だからこそ、建築基準法には「仮囲い」という、外向きの規定があるのです。
9頻出ひっかけ総まとめ
過去問で実際に「✕の選択肢」として出された文章です。すべて誤り。右列を隠して、どこが違うかを説明できるようにしてください。
| ひっかけ文(すべて ✕) | 正しい知識 |
|---|---|
| 建築基準法は、建築物の敷地・構造・設備・用途に関する最高の基準を定めたものである | 最低の基準(第1条) |
| 工事現場に設ける仮設の現場事務所は、建築確認を受けなければならない | 第85条第2項により建築確認は適用除外 |
| 工事現場に設ける仮設建築物には、構造耐力に関する規定は適用されない | 構造耐力(第20条)は適用される。免除されるのは建築確認・接道・建蔽率・容積率・防火壁・避雷設備など |
| 防火地域内に工事現場の仮設事務所を設ける場合は、耐火建築物としなければならない | 防火地域内の建築物の制限(第61条)は適用除外。ただし延べ面積50㎡超なら屋根の規定(第62条)は適用 |
| 工事現場の仮設事務所は、高さ20mを超えれば避雷設備を設けなければならない | 避雷設備(第33条)は第85条第2項により適用除外。防火壁(26条)・非常用進入口等(35条)も適用されない |
| 主要構造部とは、壁、柱、床、はり、屋根、階段および基礎をいう | 基礎は主要構造部に含まれない。基礎は「構造耐力上主要な部分」に含まれる |
| 構造耐力上主要な部分には階段が含まれる | 階段は主要構造部には含まれるが、構造耐力上主要な部分には含まれない |
| 「建築」とは、新築、増築、改築、移転および大規模の修繕をいう | 建築は新築・増築・改築・移転の4つのみ。大規模の修繕・模様替は含まれない(ただし建築確認は必要) |
| 大規模の修繕とは、主要構造部の一種以上について行う2分の1未満の修繕をいう | 過半(2分の1を超える)の修繕 |
| 便所・浴室・廊下・階段は、人が使用する部分であるから居室である | 居室は継続的に使用する室。便所・浴室・廊下・階段・物置は居室ではない |
| 建築物の敷地は、道路に1m以上接しなければならない | 2m以上(接道義務・第43条)。道路の幅員は原則4m以上 |
| 工事現場の周囲には、高さ1.5m以上の仮囲いを設ける | 1.8m以上(施行令第136条の2の20) |
| 地盤面から高さ5m以上の場所から物を投下する場合は、ダストシュート等を用いる | 3m以上。5mは「工事現場の境界線からの水平距離」の数字 |
| 集団規定(接道義務・建蔽率・容積率)は、全国どこでも適用される | 集団規定は都市計画区域および準都市計画区域内でのみ適用。単体規定は全国で適用 |
| 既存不適格建築物は違法建築物であり、直ちに現行法に適合させなければならない | 既存不適格建築物には現行規定が適用されない(第3条2項)。違法建築物ではない |
| 工事完了後の完了検査は、工事完了の日から7日以内に申請しなければならない | 4日以内に到達するように申請。7日以内は建築主事等が検査を行う期限 |
| プラットホームの上家や跨線橋は、屋根と柱を有するので建築物である | 鉄道の線路敷地内の運転保安施設、跨線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽等は建築物から除外されている |
| 「延焼のおそれのある部分」とは、隣地境界線等から1階3m以下、2階以上4m以下の部分をいう | 1階3m以下、2階以上5m以下 |
| 一戸建ての住宅や事務所は、特殊建築物である | 特殊建築物は学校・病院・劇場・共同住宅・工場・倉庫・自動車車庫など。一戸建て住宅・事務所は特殊建築物ではない |
10章末チェック ― 一問一答10問
答えを隠して○×で解き、そのあと解説を読んでください。「仮設で何が免除され、何が免除されないか」だけは、必ず言えるようにしましょう。
- 建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康および財産の保護を図ることを目的としている。
答: ○ ― 第1条のとおり。「最低の基準」がキーワードです。「最高の基準」「望ましい基準」への書き換えは✕になります。 - 工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場などの仮設建築物には、建築確認の規定は適用されない。
答: ○ ― 第85条第2項による適用除外です。建築確認・完了検査・接道義務・建蔽率・容積率・高さ制限・防火壁(26条)・避雷設備(33条)・非常用進入口等(35条)などが免除されます。 - 工事現場に設ける仮設建築物には、構造耐力に関する規定は適用されない。
答: ✕ ― 構造耐力(第20条)は適用されます。第85条第2項の適用除外リスト(第6条〜第7条の6、第15条、第19条、第21条〜第23条、第26条、第31条、第33条、第34条2項、第35条、第37条、第3章 ほか)に第20条は入っていません。「確認は不要、構造耐力は必要」――ここだけは絶対に落とさないでください。 - 主要構造部とは、壁、柱、床、はり、屋根および階段をいい、基礎は含まれない。
答: ○ ― 主要構造部(防火の概念)に基礎は含まれません。基礎が含まれるのは「構造耐力上主要な部分」のほう。逆に、構造耐力上主要な部分に階段は含まれません。「防火は階段、構造は基礎」で覚えます。 - 建築とは、建築物を新築し、増築し、改築し、または移転することをいう。
答: ○ ― この4つだけです。大規模の修繕・大規模の模様替は「建築」には含まれません(ただし建築確認の対象にはなります)。また、移転は同一敷地内での移動を指します。 - 大規模の模様替とは、建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。
答: ○ ― 「主要構造部の一種以上」×「過半」の2要件。過半=2分の1を超えるです。「2分の1未満」「一部」への書き換えが定番のひっかけ。 - 木造以外の建築物で2以上の階数を有するものの工事を行う場合は、その工事現場の周囲に、地盤面からの高さが1.8m以上の仮囲いを設けなければならない。
答: ○ ― 仮囲いは1.8m以上(施行令第136条の2の20)。木造の場合は高さ13m超または軒高9m超のものが対象です。 - 工事現場において、高さ5m以上の場所から物を投下する場合は、ダストシュートを設けるなど、飛散防止の措置を講じなければならない。 答: ✕ ― 正しくは高さ3m以上です。「水平距離5m以内」の5mと混ぜてくるのが典型的なワナ。投下は3m・防護は7m・水平距離は5mと数字を整理しておきましょう。
- 建築物の敷地は、原則として幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない。 答: ○ ― 接道義務(第43条)。ただし工事現場の仮設建築物には、第85条第2項によりこの集団規定は適用されません。
- 防火地域または準防火地域内にある仮設建築物で、延べ面積が50m²を超えるものの屋根は、政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。 答: ○ ― 第85条第2項ただし書。「仮設だから何でも免除」ではない点に注意します。
建築基準法は、土木の第一次検定では「用語の定義」と「仮設建築物の緩和(第85条)」と「工事現場の危害の防止(第90条)」の3点に絞られます。主要構造部=階段○・基礎✕/構造耐力上主要な部分=基礎○・階段✕、仮設は確認も接道も建蔽率も免除、でも構造耐力(第20条)は免除されない、仮囲い1.8m以上・高さ3m以上からの投下はダストシュート等。この3つを覚えれば1問は確実に取れます。
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